食欲不振とは?
お腹が空いているにもかかわらず、食物を食べたいという欲求が低下しているか、全くない状態を食欲不振といいます。
食欲不振の機序
食欲中枢は脳の視床下部という場所にあります。空腹時に興奮する摂食中枢と満腹時に興奮する満腹中枢があり、食欲不振は摂食中枢の活動が抑制され満腹中枢の活動が活発化している状態と考えられます。この中枢作用に影響を与えるものとして、
温度変化
環境温度や体温の上昇は、満腹中枢を興奮させ食欲を低下させます。
胃からの刺激
胃の膨満感はそれ自体が刺激となって満腹中枢の活動を促します。
*胃は空っぽになると“グレリン”というホルモンを血液中に分泌し、成長ホルモンを分泌させたり、迷走神経を経由して空腹であるという情報を脳へ伝達し摂食することを促します。また、“グレリン”は胃以外にも脳視床下部,腸,膵臓など多くの臓器から産生されるため胃を切除した方でも同様の調節がなされます。
大脳からの刺激
お腹が空いていても嫌いな食べ物や、不快なにおいがする、色がおかしい食物は食欲不振の原因となります。
精神状態による影響
不安や心配が強いときなどは、食欲中枢の機能が低下します。
*思春期から青年期にかけて女性に多くみられる徹底したやせ願望に伴う症状は、神経性食思不振症といいます。
食欲不振の原因
消化管による疾患
口内炎、舌炎、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、感染
性大腸炎、食道がん、胃がん、大腸がん、急性肝炎、肝硬変消化管以外の疾患
髄膜炎や脳腫瘍などの中枢神経疾患、甲状腺機能低下症、糖尿病、ビタミン欠乏症、亜鉛欠乏症などの内分泌代謝疾患、気管支喘息や虚血性心不全などの呼吸循環疾患、腎不全などの腎疾患やSLEなどの膠原病。
精神、神経による障害
鬱病、うつ状態、統合失調症
その他
つわり、薬剤(抗癌剤、鎮痛剤、ジギタリス、アミノフィリン、など)
食欲不振による身体への影響
食欲不振は栄養状態の低下をもたらし、体重減少や成長期であれば発育障害が起こります。
また、その随伴症状として、倦怠感、めまい、ふらつき、皮膚の乾燥、女性の場合は無月経などが現れます。
食欲不振の治療
食欲不振の原因を調べるには、患者様の症状をよくお聞きした上で、胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。適度な運動を行うことも消化管の機能改善に効果的です。また、食事をする際には、食物の温度にも気を配り、温かいものは温かく冷たい物は冷たくして提供して美味しく食事を摂取できるような環境を整えるなどの工夫が必要になります。