便秘とは?排便困難とは?
大腸は小腸で吸収されなかった食物残渣を分解し、水分と電解質を再吸収する役割を持っています。
最終的には、消化されなかった食物残渣は便として肛門から体外に排泄されます。ヒトでは直腸が袋状に形成されることによって「糞袋」としての役割をもち排便のコントロールを行うことができます。直腸に便塊がたまっていくと糞袋の内圧が上昇し、直腸の壁の筋肉が拡張し神経に信号が伝わります。直腸を取り囲む神経の束は「尿の袋」である膀胱を制御する神経の束と一塊となって、その信号を便意や尿意として中枢神経である脳に伝え、最終的には脳から直腸を取り囲む筋肉群に排泄運動を促すための信号が送られます。排出に伴う糞袋の内圧の解消が、排便時の“すっきり感”として感覚的にもたらされることは、直腸と脳にお互い密接な関係があるからです。
排便が停滞する異常には、“便秘”と“排便困難”という状態があります。健常な成人では、口から摂取した食物は約24時間~72時間後に排泄されます。通常の便の性状は、水分が4分の3を占めていますが、大腸の運動機能の低下により、腸内容が長時間停滞することで水分が過剰に吸収されると“便秘”の状態になります。また、「糞袋」の機能が低下した状態を“排便困難”といいます。
便秘と排便困難による体への影響
便が出ないからと長時間トイレにこもり“いきみ”を続けると肛門周囲に不要な圧をかけ、肛門周囲の静脈を怒張させ“痔核”を誘発します。また、強く“いきむ”ことによって、血圧が上昇して、頭痛や不眠などの全身症状や集中力の低下などの精神症状が認められることがあります。排便回数が十分にあるにもかかわらず、直腸内の糞便を十分かつ快適に排出できないと、次第に便意という神経信号が消失してしまい習慣的に便秘を引き起こすことがあります。
便秘と排便困難の治療
便秘や排便困難に対する治療は、科学的な根拠が少ないため決定的な治療法はいまだにありません。
一般的にいわれている生活習慣の改善として、
適度な運動と水分摂取
適度な運動は消化管の血流や蠕動運動を活発にします。また、水分が不足すると、便の硬さが増して便秘になりやすいです。
十分な食事
食事量が少ないと便の材料も減少して便秘になりやすいので、野菜や根菜類、海藻類やキノコ類などの食物繊維を含む食物を摂取します。ただし、食物繊維を多く摂取しすぎると大腸の中で発酵作用が多くなって過敏性腸症候群の原因となるため注意が必要です。
規則正しい生活
規則正しい生活習慣は自律神経の乱れを防いで、消化機能を活発にし、便秘の予防と改善につながります。また、便意がなくても、決まった時間にトイレで排便を試みるというような排便習慣をつけることによって排便が促されることがあります。
腹部のマッサージと温熱
腹部を「の」の字を書くようにマッサージしたり温めたりすることは、消化管の血流や蠕動運動を活発にさせ、便秘の予防になります。
ストレスの緩和
ストレスは自律神経の乱れを生じさせ、消化管の動きを鈍くさせるため、ストレスや不安の緩和が大切です。
また、緩下剤などの薬物を効果的に使用したりすることは、症状を一時的に改善させる方法として有効です。西洋医学においては、栄養補給を健康維持の最大の目的としておりますが、東洋医学ではこれと平行して、老廃物の排泄を重要視しております。当院では、漢方薬を積極的に取り入れて便秘や排便困難の治療を行っておりますので、症状でお困りの方は一度、専門医を受診してください。